株式会社NTMC 西日本コンサルティング部
松浦智和 tomokazu-matsuura@ntm-c.co.jp
企業名 株式会社 松栄軒
住所 鹿児島県出水市上鯖渕532-5
業種 弁当の製造販売
コンサルタントの松浦です。全員経営は単に部門別採算を指すのではなく、その実践には多くの要素が関わっています。特に、年度計画の策定は、企業の成長にとって欠かせないプロセスです。今回は、全員経営導入支援先である株式会社松栄軒様における年度計画発表会の様子をお送りします。
松栄軒様といえば、美味しいお弁当を製造・販売し、多くの食卓を豊かにしている企業です。その松栄軒様で新たな歴史を刻む年度計画発表会が開催されました。半年にわたり取り組んできました年度計画策定の集大成として各部門長が意気込みを語ってくれました。また、本日は、松栄軒様の年度計画発表会の様子をお届けするとともに、「全員経営」がどのようにして松栄軒様の未来を切り拓いているのか、そして当社の導入支援がそこにどう貢献したのかも合わせてご紹介します。
松栄軒様が「全員経営」を導入する前、年度計画は社長お一人で策定されていました。経営者の視点から練られた計画はもちろん重要ですが、社員の皆様にとっては、どこか「自分たちとは関係のないもの」という感覚があったようです。そのため、計画への関心は低く、目標が未達に終わっても、その原因を深く掘り下げて究明する文化は希薄でした。
これは多くの企業で見られる課題でもあります。トップがどれほど素晴らしいビジョンを描いても、それを実行する現場の社員が「自分ごと」として捉えなければ、絵に描いた餅になりかねません。
私たちが松栄軒様に提案し、導入支援を進めてきたのが「全員経営」です。このコンセプトの核心は、パート社員を含む全社員が、自社の経営に主体的に参加できる環境を構築することにあります。
「経営に参加する」とは、具体的に何を意味するのでしょうか?私たちは、それはまさに「計画作成から参加することにほかならない」と考えます。自分たちが目標を設定し、その達成に向けた戦略を自ら考え、実行する。このプロセスこそが、社員一人ひとりのオーナーシップを育み、組織全体の生産性を飛躍的に高める鍵となります。
今回の松栄軒様の年度計画は、まさにこの「全員経営」の理念に基づき、ボトムアップで作成されました。これは、全社員が経営に参加できる環境が整いつつある、何よりの証拠と言えるでしょう。
松栄軒様にとって、全社員参加型の年度計画策定は初めての試みでした。そのため、私たちは約半年の期間をかけ、綿密な導入支援を行いました。具体的には、以下の多岐にわたるサポートを提供しました。
・計画策定の目的と要諦の共有
なぜ、この年度計画を策定するのか。その本質的な意義を全社員で共有しました。
・採算表をベースとした計画フォーマットの提供
各部門が自部門の採算を意識しながら計画を立てられるよう、具体的なフォーマット
を提供しました。
・ 営業部門・製造部門の戦略策定支援
各部門の特性に合わせた、具体的かつ実行可能な戦略を立てるためのワークショップ
やコンサルティングを実施しました。
・管理部門へのとりまとめ支援
各部門から上がってきた計画を、会社全体として整合性のあるものに集約するための
支援を行いました。
・マネジメントレビューの実施
策定された計画が本当に実効性のあるものか、定期的なレビューを通じてブラッシュ
アップを重ねました。
これらの支援を組み合わせることで、プロジェクトは非常にスムーズに進行し、社員の皆様が主体的に計画策定に取り組める環境を整えることができました。
今回の年度計画発表会で最も印象的だったのは、まさに「全員経営」の真髄を示す光景でした。それは、製造部門のパート社員が、自身の部門の年度計画と実行施策について、堂々と発表したことです。
彼女たちが所属する仕込み部門は、全員がパート社員で構成されています。しかし、「全員経営」導入後は、この部門にも「部門別の採算」という概念が導入されました。これにより、日々の業務が会社の利益にどう繋がっているのか、自分たちの活動がどのように数字に影響を与えるのかを実感できるようになったのです。
発表の際、彼女たちはまるで「仕込み部門の経営者」であるかのように、計画の具体的な目標、そしてその目標を達成するための施策を、実に生き生きと語ってくれました。その目は、まさに当事者意識に溢れていました。この瞬間、私たちは「全員経営」が松栄軒様に深く根付いたことを確信しました。
パートも自信を持って発表されていました
松栄軒の松山社長も、この発表会での社員の姿を見て、感慨深げに仰っていました。
「従来は社長一人で作成していた年度計画に社員がかかわることにより、トップダウンとボトムアップの調和が図られつつあると感じています。計画は非常にアグレッシブで、実現性に少し疑問が残ると笑いながら冗談交じりで仰っていました。」
この社長のコメントは、社員の主体的な関与によって計画がより具体的かつ挑戦的なものになったことを示しています。社長の期待と、社員の成長への確信が入り混じった、温かい言葉でした。
「全員経営」導入前、松栄軒様では財務会計に基づく損益計算書で会社全体の売上や原価、利益などが共有されていました。しかし、社員の皆様は、それらの数字を「自分たちの活動結果」とは捉えていませんでした。いくら全社合計の数字を共有されても、「自分たちとは関係のない遠い数字だ」という感覚があったためです。
しかし、「全員経営」導入後、この状況は劇的に変化しました。製造部門に「生産」という収入概念を導入: 従来の原価計算だけでなく、製造が生み出す「価値」を収入として捉えることで、自分たちの業務が直接的に売上や利益に貢献していることを明確にしました。
各部門、さらには一人ひとりの活動がどれだけの付加価値を生み出し、利益に貢献しているのかを明確な数字で提示しました。これらの数字が提示されるようになったことで、社員の皆様はそれらを「自分たちの活動結果である」と素直に受け止めるようになりました。
以前とは比べ物にならないくらい、改善への意識が高まりました。自分たちの数字を良くするためにはどうすればいいか、自ら考え、行動するようになったのです。そして、その取り組みスピードも驚くほど速まりました。
数字が「遠い存在」から「自分ごとの羅針盤」に変わったことで、社員一人ひとりが経営者意識を持ち、日々の業務に真剣に向き合うようになったのです。
森田もWebにて参加しました
今回の年度計画発表会を通じて、松栄軒様が「全員経営」という強固な土台の上に、さらなる成長のビジョンを描いていることが明確になりました。全社員が同じ方向を向き、それぞれの立場で経営に参画することで、企業としてのレジリエンス(回復力)とアジリティ(俊敏性)が格段に向上していることを実感しました。
今後、松栄軒様が設定したアグレッシブな年度計画を達成していく上で、「全員経営」は不可欠な要素となるでしょう。社員一人ひとりが当事者意識を持ち、数字を共有し、自ら改善策を考え実行していく文化は、市場の変化に迅速に対応し、持続的な成長を実現するための最大の強みとなります。
森田が稲盛和夫氏から学んだことや実務経験を通じ確立した経営哲学を企業経営、マネジメントに役立つメールマガジンとしてお送りします。
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