9月下旬に、俳優の織田裕二さんが司会を務め、元陸上選手の為末大さんが出演したNHK BSプレミアムの番組『ヒューマニエンス「“遊び”それは人類の可能性の宝庫」』を視聴しました。この番組は「遊び」から人間らしさの原点を探求する内容でした。
専門的に『遊び』を研究する学者たちによれば、『遊び』は人類が多彩な道具を生み出す原動力であり、同時に人間の集団を発展させるツールであるとされています。また、研究結果から『遊び』が脳を刺激し、創造性や文化を生み出す効果があることが示唆されました。
後述しますが、当社で提唱する『全員経営』は、経営をゲームのようなアプローチで捉え、遊びの要素を取り入れています。この方法により、脳を刺激し、新たな発想や文化を育む契機を提供しています。
また、別の日に放送された日本テレビの「人たらしになる方法」というテーマで放送された『カズレーザーと学ぶ。』という番組によると、人に魅了されている時、人間の脳には『ドーパミン』と『オキシトシン』が同時に分泌されます。前者は「うれしい」「おいしい」など、興奮を伴う感動をした場合に出るもので、後者はスキンシップなどで幸せな気分になり、安心感を伴う時に分泌されます。
さらに、人たらしな人は他人に「興奮と安心感」の両方を与えることができ、人は自分を他人から認めてもらうことに強い関心を持っているという説明がありました。
NHK BSプレミアムと日本テレビの番組で紹介された通り、人の脳に刺激を与えて脳内物質の分泌を促すことがわかってきました。これを企業経営にうまく活かすことはできないでしょうか?
自画自賛になってしまいますが、それが全員経営であると自負しています。この経営手法はゲームや遊びの要素を組み込んでおり、脳に刺激を与えます。結果として従業員を奮い立たせることにつながるのです。
ゲームやスポーツでは、スコアが表示されることで人々の競争心が刺激され、楽しさが増します。スコアが明確になり、勝ち負けがわかるからこそ、「よし、頑張ろう」「次は負けないぞ」という気持ちが湧き上がってきます。
経営においても、売上、新規顧客獲得数、生産高など数値化されている指標はいろいろあります。これらをゲームやスポーツのスコアのように駆使することで従業員の競争心を刺激することは可能です。KPIマネジメントと呼ばれる管理手法がこれに該当します。この手法では、目指すべき方向性がKPIという具体的な指標で定められており、個人や組織のモチベーションアップを期待します。
しかし、KPIマネジメントの運用については注意すべき点があります。例えば、「新規顧客獲得数」が増えたとしても、その一方で大きなコストが発生していることがあるため、この数字だけで良し悪しの判断を下すことは難しいです。そこで、顧客獲得に掛かったコストなど他の指標を併用しながら経営判断をすることになりますが、いろんな数値がゴチャゴチャあると判断が難しくなります。しかも、各部門が独自の指標を用いている限り、社内において営業、製造、管理など、複数ある部門を同じ土俵で比較することは困難になります。
だから、新規顧客数などの数値ではなく「利益」に焦点を当てた方が良いのです。企業経営においては、開発、生産、営業などさまざまな活動を行っていますが、結局のところ「利益」を追求しています。全員経営の手法では、お客さまと接して注文を取ってくる営業部門だけではなく、製造など他の部門も利益を生み出すと捉えているのです。
ところが、会社全体や事業部全体の利益では、大半の従業員は自分に直接関係があるという意識が生まれません。そこで、一人ひとりの従業員に「自分事」として捉えてもらうためにはどうしたら良いでしょうか?
中小企業で仕事をするパート従業員の人たちをよく観察すると、会社の売上や利益などにはあまり興味を示さなくても、自分自身の時給や自分が属する小さなチームの成果に対しては一喜一憂することが多いはずです。
つまり、会社や事業部全体の利益だけではなく、細分化したチーム単位で利益を見える化させることで「自分事」として捉えてもらうことができます。「利益」という同じ指標を用いれば社内の複数の部門を同じ土俵で比較することが可能になります。先に述べた通り、ゲームやスポーツでスコアを競い合うように従業員の競争心を刺激することも可能になります。
このように小さなチーム単位で身近な数字を「可視化」し、経営陣だけではなくパートの方々を含めて全員で経営をゲームのように楽しみ、従業員を刺激し、モチベーションを高めることにつなげるのが全員経営なのです。
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